「面接で必ず聞かれると分かっているのに、志望動機が思いつかない…」
そんな悩みを抱えている人は意外と多いものです。とくに、未経験の業界や職種に挑戦する場合、「なぜこの会社なのか」をうまく言葉にできず、頭を抱えてしまうこともあるでしょう。
ですが、志望動機が浮かばないのは「やる気がないから」ではありません。単に、自分の気持ちを整理できていないだけです。コツを押さえて順序立てて考えれば、誰でも自然で説得力のある志望動機を作ることができます。
この記事では、
- 志望動機が思いつかない原因
- 簡単に整理できる3つのステップ
- 未経験でも伝わる例文集
- ありがちなNG例とその改善方法
を具体的に解説します。自分と企業の“接点”を見つけて、面接でしっかりアピールできる志望動機を一緒に作っていきましょう。
志望動機が思いつかないのは「普通」
転職活動を始めた多くの人が、「志望動機がうまく言えない」と悩みます。実は、これはごく自然なことです。特に未経験の業界や職種に挑戦する場合、具体的な経験や知識がないため、「どうしてこの会社を選んだのか」を言葉にするのが難しくなります。
また、応募する企業や求人を見つける段階で、「とりあえず条件が良さそうだから」という理由で選んでしまう人も少なくありません。この場合、まだ自分の中で「働く目的」や「将来のイメージ」が整理できていないため、志望動機を作る段階で行き詰まってしまうのです。
大切なのは、「浮かばない=ダメ」ではないと知ることです。志望動機は、思い付きで考えるものではなく、自分の価値観や経験、企業との共通点を整理して見つけるもの。順序を踏んで考えれば、誰でも説得力のある動機を作れます。
志望動機を考える3つのステップ
「志望動機が浮かばない」という人でも、順序を追って考えれば整理しやすくなります。
ポイントは、思い付きで作るのではなく、自分の過去や価値観を起点にして、企業との接点を見つけることです。
具体的には、以下の3つのステップで進めるのがおすすめです。
- 自分の経験や強みを棚卸しする
これまでの仕事や学びの中で得たスキルや、やりがいを感じた瞬間を洗い出します。 - 企業や仕事の特徴を調べる
その会社の事業内容や理念、働き方を知り、自分の価値観や強みと重なる部分を探します。 - 「自分だからできること」と結びつける
自分の経験や価値観をベースに、「その会社でどう貢献できるか」を動機としてまとめます。
この流れで考えると、単なる条件の希望ではなく、**「この会社で働く理由」**が自然と浮かび上がり、面接でも伝わりやすい志望動機が作れるようになります。
詳しくみていきましょう。
自分の経験や強みを棚卸しする
志望動機を考える第一歩は、自分を知ることです。これまでの仕事や学業、アルバイト、ボランティアなどの経験を振り返り、どんな場面でやりがいを感じたか、どんなスキルを身につけたかを洗い出しましょう。
たとえば、
- 人と話すのが好きで、顧客対応で感謝された経験がある
- データをまとめたり、効率化の工夫をするのが得意
- チームで目標を達成する過程で達成感を得た
といった要素が見えてくると、自分がどんな環境や業務に向いているかのヒントになります。
企業や仕事の特徴を調べる
次に、志望する企業や職種についてリサーチします。「なぜこの会社なのか」を説明するには、事業内容や理念、働き方をしっかり理解することが不可欠です。
企業のホームページや求人票だけでなく、口コミサイトや社員インタビュー、ニュース記事なども参考にすると、より具体的なイメージがつかめます。
特に注目すべきは以下のポイントです。
- 事業やサービスが社会でどんな価値を生んでいるか
- 企業の理念やビジョンが自分の価値観と合うか
- 働き方やキャリアパスが、自分の目指す方向とマッチするか
「自分だからできること」と結びつける
最後に、棚卸しした自分の経験や強みと、調べた企業の特徴を結びつけます。
ここで重要なのは、「自分がどう貢献できるか」を明確にすることです。
たとえば、
- 「前職で培ったデータ分析スキルを活かして、御社の業務改善に貢献したい」
- 「顧客対応の経験を生かし、御社のサービス品質をさらに高めたい」
- 「理念に共感し、チームの一員として長期的に成長したい」
といった形で、自分の言葉で結びつければ、採用担当者にも納得感のある志望動機が伝わります。
未経験でも使える志望動機の例文
未経験で転職活動をしていると、「どんな志望動機を書けばいいのかわからない…」と悩む人は多いものです。
経験がない分、「熱意」や「成長意欲」、「これまでの経験の活かし方」をしっかり伝えることが大切です。
ここでは、未経験でも使える志望動機の例文を3パターン紹介します。どれもそのまま使えるだけでなく、業界や職種に合わせてカスタマイズしやすい形になっています。
例文1:事務職への転職(接客業からの転職)
「前職では、接客業で多くのお客様と接しながら、コミュニケーション能力や臨機応変な対応力を培いました。今後は、これらの経験を活かして、社内外の調整やサポートを行う事務職で活躍したいと考えています。御社はチームワークを重視しており、私の経験を活かしてスムーズな業務運営に貢献できると感じ、志望いたしました。」
この志望動機が評価されやすいポイントは、以下の通りです。
- 前職で培ったスキルを具体的に示している(コミュニケーション能力・臨機応変さ)
- 事務職での活かし方を明確に伝えている(社内外の調整やサポートに応用)
- 応募先企業との接点を示している(チームワーク重視という企業特性とのマッチング)
未経験であっても、前職の経験を「どのように活かせるのか」を具体的に伝えることで、説得力のある志望動機になります。
例文2:IT業界への転職(未経験から挑戦)
「これまで営業職として培った課題解決力や顧客折衝スキルを、IT業界でのシステム提案や導入支援に役立てたいと考えています。独学でプログラミングの勉強も始めており、知識を実務に生かしながら、技術的なスキルも高めていきたいと思っています。成長分野である御社で挑戦し、早期に戦力となれるよう努力いたします。」
この志望動機が伝わりやすいポイントは、以下の通りです。
- 前職でのスキルを具体的に活かす姿勢を示している(課題解決力や顧客折衝スキルをIT分野へ応用)
- 学習や努力をアピールしている(独学でプログラミングを習得し始めている点)
- 企業の成長性と挑戦意欲を結びつけている(成長分野で挑戦し、戦力になる意思を明示)
未経験分野への転職でも、「これまでの経験の応用」と「学習意欲」を具体的に示すことで、ポテンシャルを評価してもらいやすくなります。
例文3:未経験の営業職に挑戦する場合
「これまでの事務職で培った正確なデータ管理や社内調整の経験を活かし、お客様の課題を的確に把握したうえで最適な提案ができる営業職を目指しています。御社は研修制度が充実しており、未経験からでも着実にスキルを磨ける環境である点に魅力を感じました。持ち前の粘り強さを生かし、成果を出せる営業パーソンを目指します。」
この志望動機が伝わりやすいポイントは、次の3つです。
- 事務職で培ったスキルを営業にどう活かすかを具体的に述べている(データ管理や調整スキルを顧客対応に応用)
- 企業の特徴と自分の成長意欲を結びつけている(研修制度を活用し、スキルを磨く姿勢)
- 成果への意欲を明確に示している(粘り強さを武器に、結果を出す営業職を目指す)
未経験職種でも、「これまでの経験」「企業の環境」「自分の意欲」をバランスよく組み合わせることで、説得力のある志望動機になります。
やってはいけないNG例と改善方法
志望動機を書くときにありがちな失敗例を押さえておくことで、「伝わる」動機に仕上げやすくなります。ここでは、よくあるNG例と、その改善方法を具体的に解説します。
NG例1:具体性のない志望動機
「これまでの経験を活かしつつ、新しい環境で自分を成長させたいと考えています。御社は業界内での実績が豊富で、社員一人ひとりが活躍できる環境が整っていると感じ、私のキャリアアップに最適だと思い志望いたしました。これまで培ってきた経験を生かしながら、御社でさらに成長し、貢献していきたいと考えています。」
一見もっともらしく聞こえますが、
- 「どんな経験を活かすのか」
- 「具体的にどの業務で貢献できるのか」
- 「なぜ御社なのか(他社ではなく)」
が不明確で、結局「どこでも使える汎用的な志望動機」になってしまっています。
改善するなら、経験の具体例や会社の特徴と自分の強みとの結びつきを加える必要があります。
NG例2:待遇面だけで選んでいる志望動機
「長期的に安心して働ける環境を探しており、御社の給与水準や休日制度、福利厚生がとても充実している点に魅力を感じました。安定した職場で、私生活とのバランスを保ちながら働き続けたいと考えており、御社であればその希望を叶えられると感じています。そのため、ぜひ御社で新たなキャリアを築きたいと思い志望いたしました。」
このままだと、
- 「どのように会社に貢献するのか」
- 「なぜその職種で働きたいのか」
- 「自分のスキルや経験がどう役立つのか」
がまったく書かれておらず、“待遇目当て”でしかない印象を与えてしまいます。
待遇だけの志望動機を改善するには、自分の経験の具体例を交えつつ、会社の特徴や求める人物像と自分の強みを結びつけることが大切です。これにより、“待遇目当て”ではなく、“貢献意欲がある人材”として好印象を与えることができます。
NG例3:自己PRだけで終わる志望動機
「私はコミュニケーション能力に自信があります。前職では多くのお客様と接し、常に笑顔で対応し、信頼関係を築くことを意識していました。お客様から『話しやすい』と評価をいただくことも多く、職場でもその点を活かして良好な人間関係を築けていました。御社でも、これまで培った人と接するスキルを活かして活躍できると考えております。」
これだけでは、
- 具体的な仕事内容への結びつきがない
- 企業の特徴や職種の要件を無視している
- 成長や貢献のビジョンが伝わらない
「自分のスキルや経験がどう役立つのか」そのスキルをどのように御社で活かすのかが見えてきません。
このような志望動機を改善するには、自己PRをしたあとに、「具体的な業務」「企業の強みや課題」「自分の経験の活かし方」をつなげることが重要です。さらに、将来どう成長し、どのように会社に貢献したいかを添えると、「この会社で働きたい理由」と「採用する価値」が明確になり、選考でも好印象を与えます。
NG例を避けつつ、「自分の経験」「企業の特徴」「将来のビジョン」の3つを意識してまとめれば、選考でも印象に残る志望動機に仕上がります。
まとめ|自分と企業の“接点”を見つけるのがコツ
志望動機は、「立派な言葉」や「完璧な文章」を目指す必要はありません。大切なのは、自分の経験や強みと、企業の特徴や求める人物像をどう結びつけるかということです。
- どのようなスキルや経験を活かせるのか
- なぜその企業・その職種で働きたいのか
- 入社後にどのように成長し、貢献できるのか
この3つを意識して志望動機を作ることで、「待遇だけが目的」や「どこでも言える話」から脱却できます。
未経験であっても、具体的な経験や姿勢を伝えられれば、十分に「採用する価値がある人材」として評価されます。志望動機に悩んだら、まずは「自分と企業の接点」を言語化することを意識してみましょう。それが、選考を突破するための第一歩になります。
そして何より大切なのは、完璧でなくても、まずは書き始めてみることです。最初の一歩を踏み出せば、文章は必ずブラッシュアップできます。迷って手を止めるよりも、まずは動き出して、自分らしい志望動機を形にしていきましょう。